こんにちは。
認知症の方と会話をしていると、こちらが普通に話しているつもりでも、
うまくやりとりが噛み合わないと感じることはありませんか?
「どうして同じことを何度も聞くんだろう…」
「話している途中で全然違う方向に行っちゃう…」
「こちらの気持ちが伝わらない…」
そんなふうに感じて、ちょっと疲れてしまう日もあると思います。
でも、ちょっとした工夫を取り入れるだけで、会話がぐんとスムーズになったり、
お互いに気持ちよく、安心感のある時間を過ごせるようになるんです。
今回は、介護の現場や家庭で役立つ「7つのコツ」をまとめてみました。

コツ1:「否定しない」で受け止める
認知症の方は、記憶が抜け落ちたり昔の記憶に戻ったりすることがあります。
例えば「今日は夕飯まだ食べてないよね?」と言われても、実際はもう食べ終わっていることも…
よくある話ですが、
そんな時に「もう食べたでしょ!」と否定すると、相手は混乱したり不安になったりします。
それよりも「そうだね、ちょっとお腹すいたかな?」
と気持ちを受け止める方が安心してもらえます。
大切なのは「事実の修正」ではなく「気持ちの受けとめ」なんです。

コツ2: ゆっくり、はっきり話す
認知症になると、相手の言葉を理解するスピードがゆっくりになります。
こちらが早口で話してしまうと、理解が追いつかず会話が途切れてしまうことも…。
例えば「お茶とお菓子、どっちにする?」と二択で聞くより、
「まずはお茶にしようか」とシンプルに伝える方が分かりやすいです。
声の大きさは普通でOK。
ただし、スピードと区切りを意識すると良いですね。
「相手が理解できるペース」をこちらが合わせてあげるイメージです。
コツ3: テーマを広げすぎない
認知症の人に、一度にいろんな話題を出してしまうと混乱してしまいます。
「今日は病院に行ったでしょ?あのお医者さん、やさしかったね。」
といったシンプルで一つのテーマに絞った会話の方が続きやすいです。
「病院どうだった?そういえば昨日のテレビ面白かったね、あとご飯どうする?」のように
話題を広げすぎると理解が追いつかなくなります。
ポイントは『一つの話題をゆっくり』です。
それだけで会話がグッとスムーズになりますよ。
コツ4: 過去の話題を活かす
認知症の方は「最近のこと(短期記憶)」よりも、
「昔のこと(長期記憶)」の方が残りやすい傾向があります。
例えば、今日のお昼ご飯は忘れてしまっても、若い頃に働いていた職場の話や、
子育ての思い出は鮮明に覚えていることが珍しくありません。
そこで会話のきっかけに過去の思い出を活用すると、相手が自信を持って話せる時間が増えます。
「昔はどんなお仕事をしてたの?」「学生の頃はどんな遊びをしてた?」など、
自然に懐かしい記憶に触れられる質問をすると表情がいきいきしてくる方も多いです。
さらに、その思い出を否定せずに一緒に楽しむ姿勢が大事。
例えば「その頃は楽しかったんだね」と共感するだけで、相手の安心感に繋がります。

コツ5: 表情やしぐさで安心を伝える
認知症の方にとって、言葉の理解が難しい時でも表情やしぐさは伝わりやすいんです。
やさしい笑顔でうなずいたり、そっと肩に手を置いたりするだけで、
「自分は受け入れられている」と感じてもらうことができます。
逆に、こちらがイライラした表情を見せてしまうと不安になり、会話が続きにくくなることも…。
介護は大変でつい疲れが顔に出てしまうこともあると思いますが、
少し意識するだけで変わります。
「言葉+表情+しぐさ」のセットで安心感を届ける。
これが会話の雰囲気をぐっと柔らかくしてくれますよ。
コツ6: 質問よりも「共感」を大切にする
認知症の方との会話で意外と疲れてしまう原因のひとつが、
こちらがつい「質問」を繰り返してしまうこと。
「今日は何食べた?」「昨日は誰と会った?」など、良かれと思って問いかけても、
相手にとっては答えるのがプレッシャーになることがあります。
記憶があいまいな状態で質問されると、「思い出せない自分」に不安を感じたり、
失敗体験につながってしまう可能性もあるんです。
そこでおすすめなのが、質問より共感を意識すること。
例えば相手が「寒いねぇ」と言ったら、「そうだね、今日は風が冷たいね」と共感で返す。
「この服、昔着てたものに似てる」と言ったら、
「そうなんだ、思い出があるんだね」と気持ちに寄り添う。
会話を「思い出すためのクイズ」にするより、「安心できる気持ちのやり取り」にするほうが、
相手の表情もやさしく落ち着いてくるようです。

コツ7: 安心できる環境を整える
会話は、言葉だけで作られるものではありません。
どんな環境で話すかも、とても大切なポイントになります。
雑音が多かったり、テレビの音が大きすぎたりすると、
認知症の方は会話に集中しづらくなります。
できるだけ静かで落ち着いた空間を作ってあげると、言葉が届きやすくなるんです。
また、座る位置にも工夫を。
正面から向き合うよりも、斜め横に座ると緊張感が減って自然に会話が続くことがあります。
相手の表情が見えやすく、聞き取りやすい距離感を意識しましょう。
さらに大切なのが時間帯。
夕方になると「夕暮れ症候群」と呼ばれるように不安定になりやすい方もいるため、
できれば午前中や昼下がりなど、比較的落ち着いている時間に会話するのも有効です。

最後に
会話の中でつい「間を埋めなきゃ」と思いがちですが、実は沈黙も大切です。
認知症の方は、言葉を思い出したり考えたりするのに時間がかかることがあります。
沈黙の時間を焦らずに待つことで、相手が自分のペースで言葉を選ぶことができます。
むしろ、無理に話題を続けようとすると、混乱や不安の原因になってしまうこともあります。
「少し黙って待つ」──たったこれだけで、相手は安心して話せるようになります。
また、沈黙の間に優しく手を握ったり、
軽くうなずいたりするだけでも、気持ちは通じやすくなります。
介護はどうしても大変な場面が多いですが、相手の表情がほっと和らぐ瞬間があると、
こちらの気持ちも救われますよね。
今回のコツを参考にしながら、無理のない範囲で取り入れてみてください。
認知症の方との会話は、正解を求めるものではなく、安心できる時間を一緒に過ごすためのもの。
あなたのやさしさは、きっと相手の心に届きます。
焦らず、ゆっくり、笑顔で。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 「認知症の方と関わるとき〜大切なポイント」国立長寿医療研究センター
- 「認知症の方とのコミュニケーションがうまくいくコツ」日本保健福祉ネイリスト協会
- 「認知症の人にやってはいけないこととは」LIFULL介護
- 「コミュニケーションとアルツハイマー」アルツハイマー協会米国
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