はじめに:在宅介護は、毎日の積み重ね
在宅介護は、施設に預ける介護とはまた違った大変さとやりがいがあります。
「一日中気が抜けない」「自分の時間がない」そんな声もある一方で、「家で過ごしてもらいたい」「後悔のないように寄り添いたい」と願う方も多くいらっしゃいます。
この記事では、在宅介護を実際に行っている家庭の一日を例に、具体的なスケジュールや介護者の本音、日々の工夫をご紹介します。
介護に関わるすべての方に、「ひとりじゃない」と思ってもらえるように、やさしい気持ちで綴りました。

在宅介護ってどんな形があるの?
在宅介護といっても、家庭によって支援の形はさまざまです。
代表的なスタイルを簡単に紹介します。
- 家族が中心で介護するスタイル:配偶者や子どもが付き添う形。最も多いパターン。
- 訪問介護サービスの活用:ヘルパーさんや看護師が定期的に来てサポート。
- デイサービスとの併用:平日は通所、夜は自宅で介護をするハイブリッド型。
家族だけで全てを担う必要はなく、介護保険サービスを上手に使いながら「続けられる介護」を目指すのが大切です。

在宅介護の一日スケジュール例
ここでは、要介護3の母を自宅で介護しているAさん(50代・女性)のケースをもとに、在宅介護の一日をご紹介します。
※家庭や介護度により内容は異なりますが、在宅介護のリアルなイメージとしてご覧ください。
6:00〜8:00 起床・トイレ介助・朝食づくり
朝は介護者が少し早めに起床し、自分の身支度を済ませます。
その後、親を起こしてトイレ介助→洗顔・着替えへと続きます。
トイレのタイミングは人によって異なるため、毎日違う工夫が必要。
「昨日より動きが重いな」「今日は元気そう」そんな小さな変化を観察するのも大事な仕事です。
その後は朝食の準備へ。ごはん・味噌汁・卵焼きなど、本人の好みと嚥下状態を考慮しながら献立を調整します。

8:00〜10:00 服薬・バイタルチェック・見守り
食後には服薬のサポート。薬の飲み忘れや誤飲を防ぐため、目の前で確認するのが安心です。
その後は血圧や体温などのチェックを行い、異常がないかを記録。
この時間は比較的ゆっくり過ごせることが多く、テレビを一緒に見たり、お茶を飲んだりと穏やかな時間が流れます。
ただし、目を離せないため介護者の自由時間にはなりにくいのが現実です。
10:00〜12:00 入浴介助・買い物・掃除
この時間に訪問ヘルパーさんや訪問看護師が来てくれる日もあります。
入浴介助の日には、滑らないようにマットや手すりの確認をしてから、声かけしながらゆっくりお風呂へ。
入浴がない日は、掃除・洗濯・食材の買い出しなど、家事の時間になります。
介護をしながら家事もこなすのは大変ですが、「清潔にしてあげたい」という想いが原動力になるそうです。

12:00〜14:00 昼食・服薬・少し休憩
昼食は、飲み込みやすく・消化に良いものを意識して準備します。
「おいしいね」「ありがとう」のひと言で、介護者の疲れがすっと軽くなる瞬間です。
食後には再び服薬をサポートし、必要に応じてトイレ誘導や口腔ケアを行います。
午後に向けて、ベッドやリクライニングチェアで短い休憩時間を取ることが多いです。
14:00〜16:00 散歩・訪問介護・リハビリ支援
午後は、気分転換を兼ねて近所を散歩したり、ベランダで日光浴をしたり。
天気や体調によっては、家の中で体操やストレッチを行う日もあります。
この時間帯に、訪問リハビリの理学療法士が来てくれる日もあります。
介護者にとっては、専門職からアドバイスをもらえる貴重な時間です。
16:00〜18:00 夕食づくり・口腔ケア・記録
夕方になると、夕食の準備が始まります。
この時間帯は介護者自身も疲れが出やすく、「魔の時間帯」とも呼ばれることがあります。
できるだけ作り置きや冷凍食品を活用するなど、無理をしすぎない工夫がカギ。
食後は口腔ケア、排泄の介助、当日のバイタル記録などを行いながら、1日の終わりが近づいてきます。
18:00〜21:00 就寝準備・トイレ・夜間の見守り
就寝前にはパジャマへの着替え、歯みがき、トイレ誘導などを行います。
「今日はよく眠れるかな」「夜中に何度起きるかな」など、介護者の心配は尽きません。
夜間は見守りモードへ。頻繁に起きる方の場合は、ナースコールやセンサーを活用することもあります。
介護者も自分の体を守るために、できるだけ休息を取る工夫が求められます。

介護者のリアルな本音
「一人で抱え込んでしまう」
「つい我慢してしまう」「相談できる人がいない」——こうした声は非常に多く聞かれます。
在宅介護は孤独との闘いでもあり、精神的なケアも必要です。
「イライラしてしまって自己嫌悪…」
心に余裕がなくなると、つい声を荒げてしまうことも。
そんな自分に落ち込む方もいますが、それは人間らしい反応。誰しも疲れるのは当たり前なんです。
「ありがとうのひと言で救われる」
たとえ小さな一言でも、「ありがとう」「おいしかったよ」と言われるだけで、涙が出るほど嬉しいという声も。
その言葉が、明日もがんばろうと思える力になるのです。

在宅介護を続けるための工夫とサポート
- ケアマネジャーに頼る:プロの視点で支援策を提案してくれる大きな存在
- デイサービスを利用する:一時的に介護の手を離せる「休息」の時間に
- 訪問介護や訪問入浴の活用:自宅にいながらプロのケアを受けられる
- 相談窓口や家族会への参加:同じ悩みを持つ仲間とつながれる
介護者自身が倒れてしまっては元も子もありません。
「休むことは悪いことじゃない」と、自分にもやさしくしてあげましょう。
まとめ:がんばりすぎない在宅介護のすすめ
在宅介護は、日々の小さな積み重ねの中で成り立っています。
介護をする側もされる側も、「できること」と「できないこと」があるのは当たり前。
だからこそ、完璧を目指さず、適度に手を抜きながら続けていくことが大切です。
このブログが、少しでも心のよりどころになりますように。あなたはひとりじゃないよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 厚生労働省「在宅介護支援の手引き」
- 東京都福祉保健局「家でできる介護の実際」
- 民間介護サービス事業者のモデルスケジュールより
- 実際の介護者インタビュー記事をもとに構成
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