こんにちは。
「お母さまから、職員に対してきつい言葉があったようで…」
ある日突然、施設やデイサービスのスタッフからそんな連絡が来たら、
どんな気持ちになるでしょうか。
驚き、戸惑い、恥ずかしさ、そして少しのショック…。
今回は、親が介護士さんに暴言を吐いてしまった時、家族としてどう受け止め、
どう対応していけばいいかを一緒に考えてみたいと思います。

1.高齢者の“暴言”って、どんなときに起きる?
実は、施設や在宅介護の現場では「暴言・暴力」の問題は珍しくありません。
・「こんなこと頼んでないわよ!」
・「勝手に部屋に入るな!」
・「どこ触ってるんだ!」
これは決して、本人が悪いからではなく、
認知症の症状や混乱、不安、羞恥心、プライドなどが重なって現れることが多いのです。
2.家族が受ける“クレーム”の重さ
介護スタッフから「お母さまが暴言を…」と伝えられたとき、
家族の心にはさまざまな感情が渦巻きます。
・申し訳なさでいっぱいになる
・「うちの親がそんなことを…」と信じられない
・恥ずかしい
・スタッフに嫌われてしまわないか
でもこれは、“あなたの責任ではありません”。
施設や訪問サービスは、こういった場面に対して一定の理解と対応の準備があります。
家族が深く思い詰めすぎないことが大切なんです。

3.「クレーム=責められてる」わけじゃない
職員さんからの報告や連絡は、「ご家族を責めたいから」ではなく、
・今後の対応を一緒に考えたい
・本人の状態をよりよく把握したい
という気持ちから出てくることがほとんどです。
とはいえ、感情的には受け止めきれないこともありますよね。
だからこそ、冷静に向き合うことが、心を守るカギになります。
4.施設やスタッフと連携することが鍵
「迷惑をかけたから…」と遠慮して連絡を避けてしまう方もいますが、
こういう時こそ、職員さんを“味方になってもらう”ことが大切です。
施設によっては、介護記録とは別に“家族との連絡ノート”を設けてくれるところもあります。
・「最近、家では落ち着いています」
・「歯が痛いと言っていたので、様子を見てください」
・「新しい薬が増えました」
ちょっとした情報共有で、ケアのヒントが見つかることもあるんです。
こういったやり取りができると、スタッフ側も
「家族と一緒に支えていける」と感じやすくなります。

5.同じようなことが何度も…繰り返される暴言
「この前もあったのに、また…」
そんなふうに、暴言が何度も繰り返されると、家族としては本当に悩んでしまいますよね。
・「またクレームが来るんじゃ…」とびくびくする
・職員に申し訳なくて顔を合わせづらくなる
・自分のせいのように感じて、気持ちが沈んでいく
でも、繰り返される暴言の裏には、本人なりの「SOSサイン」が隠れていることが多いんです。
よくある3つのきっかけ
❶身体的な不快感
痛み、かゆみ、トイレの不安など、
うまく言葉にできない不快感が暴言として出ることがあります。
❷認知症による混乱
「見知らぬ人が触ってくる」「家に帰らせてくれない」と感じることで、
防衛反応として怒りが出てくることも。
❸プライドの揺らぎ
「こんなこともできなくなった」と自分を責める気持ちや、周囲への依存への戸惑いが、
苛立ちに変わることがあります。
6.家族が取れる小さな対応
タイミングを見て本人にも声かけ
もしご本人に話が通じる状態であれば、責めるのではなく、やさしく伝えてみましょう。
「昨日ちょっと怒っちゃったみたいだね、どうしたの?」
「言いたいことがあるなら、私にも教えてね。」
感情に寄り添ってあげるだけで、次に気持ちを吐き出す先が変わることもあります。

7.第三者の力を借りてもいい
何度も続くと、「もう限界かも…」と思うことも当然です。
そんな時は、施設の相談員さんやケアマネジャー、
場合によっては地域包括支援センターに相談してみてください。
家族だけでなんとかしようとしなくていい。
相談していいし、頼っていいんです。
「困ったね」「一緒に考えよう」と言ってくれる存在が、きっといます。
8.家族がいちばん傷ついている
暴言のことでクレームを受けたとき、一番つらいのは、実は家族自身だったりします。
・「なんであんな言い方するの?」と親に対して悲しくなる
・「申し訳ありません」と頭を下げながら心が擦り切れていく
・「もう面会に行きたくない」と感じるようになる
そんなふうに、知らず知らずのうちに、心が疲れていってしまうんですよね。
感情にふたをしなくていい
「また迷惑をかけた」と思うたびに、自分の気持ちを抑え込もうとしてしまいがちです。
でも、気持ちを発散することは大切。
傷ついてること、困ってること、情けないと感じてること、
たとえば、ノートに書き出すだけでもOK。
信頼できる誰かにちょっと話すだけでも、ふっと心が軽くなります。
9.「また起きるかも…」への不安と向き合う
一度経験すると、「また暴言が出たらどうしよう…」という不安が常につきまといます。
そんなときは、ちょっとした“予防的な工夫”を意識してみましょう。
本人にとっての安心材料を見つける
・好きな音楽をかけると落ち着く
・好きな職員さんがいると安心する
・食事の時間が楽しみになる
こうした“安心スイッチ”を施設と共有しておくと、
本人の感情の波をやわらげる助けになります。
環境の変化をできるだけ小さく
急な部屋替え、スタッフの交代、行事の参加など、
ちょっとした変化も大きなストレスになります。
・あらかじめ本人に説明しておく
・「〇〇さんが今日は担当してくれるよ」と前もって伝える
そんなふうに、予告と安心をセットにすることが、混乱を防ぐカギになります。
10.暴言があっても、親は“悪い人”じゃない
ついつい、「あんなこと言うなんて」と落ち込んでしまうけれど、
暴言があっても、それは一部の“症状”であって、本人が悪いわけではありません。
いつも優しい言葉をくれたこと。
家族のために一生懸命働いてくれたこと。
静かに微笑んでくれたあの表情。
それらは全部、ちゃんとその人の中に今もあります。
だから、暴言にばかり目を奪われず、
できるだけその人の“根っこ”を見てあげられるといいなと思います。

11.おわりに
親が暴言を吐いたことで、クレームを受けた――
その経験は決して軽いものではないし、家族にとっても大きなストレスです。
でも、そこで立ち止まって、「今、できること」をひとつずつ探していけば、
少しずつ、心も現場も落ち着いていくことがあります。
迷いながらでも、悩みながらでも、できることを見つけていけたらいいですね。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 厚生労働省「令和4年度 高齢者虐待の防止・高齢者の養護者に対する支援等事業」
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」
- NCCU(日本介護クラフトユニオン)「介護現場における利用者・家族からのハラスメントの実態あり」
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