こんにちは。
「お母さん、施設に入ったほうがいいのかな…」
「でも、できることなら家で最期まで…」
介護が必要になったとき、誰しも一度は悩むこの問い。
「同居して介護するべきか」
「施設にお願いするべきか」
──答えは簡単には出ません。
どちらの選択にも、メリット・デメリット、そして何より家族の想いが関わってきます。
この記事では、介護をめぐる家族の葛藤と向き合いながら、
同居介護と施設介護、それぞれの現実を丁寧に見つめていきます。

1.同居して介護するという選択
「家族なんだから、できるだけそばにいてあげたい」
そんな想いから、同居しての介護を選ぶ方は少なくありません。
特に親が一人暮らしだった場合、
「急な体調変化に対応できるように」
「さみしい思いをさせたくない」などの理由で、同居を始めるケースは多いです。
実際に多いケース
・娘夫婦が実家に引っ越してくる
・逆に、親を子世帯の家に呼び寄せる
・定年後に実家へUターンし、親の介護を担う
どのケースにも共通するのは、「できるだけ家族の力で支えたい」という想いです。
2.同居介護のメリット
まずは、同居介護の良い点を見てみましょう。
❶すぐに対応できる安心感
同じ屋根の下にいれば、転倒や体調不良など、何かあったときにもすぐ気づけます。
日々の変化にも気づきやすいのは、同居ならではの強みです。
❷親も安心できる
「知らない場所で過ごすのは不安…」という高齢者にとって、
子どもや孫のいる家で暮らせるのは大きな安心材料。
❸生活全体を見守れる
食事、服薬、入浴…生活のすべてを身近に見られるため、細やかなケアが可能です。
3.だけど、現実はそんなに甘くない
「家で看る」と決めたとき、多くの方が見落としがちなのが、介護する側の負担です。
一緒に暮らすということは、24時間、常に気が張っている状態。
夜中にトイレの介助、認知症による徘徊、何気ない言動へのストレス…。
それは、心の余裕を少しずつむしばんでいきます。
また、家庭内の役割分担も曖昧になりがち。
「誰がどこまでやるのか」「自分の時間はどこにあるのか」──
その境界線があいまいになることで、家族間のトラブルに発展するケースも多いのです。

4.施設介護を選ぶということ
「施設に入れるなんて、かわいそう…」
そんな声に、心が揺れる方も多いかもしれません。
けれど、最近では「親の尊厳を守るため」「自分の生活を壊さないため」に、
あえて施設を選ぶというご家族も増えています。
これは、「手放す」のではなく、
プロの手を借りることで、よりよい介護を実現するための選択なのです。
施設介護のメリット
❶24時間の見守り体制
夜間もスタッフが常駐しているので、転倒や急変にも迅速に対応してもらえます。
❷専門職によるケア
看護師や介護士、機能訓練士などが連携し、
専門的なケアを提供してくれるのは大きな安心材料です。
❸家族が“家族”に戻れる
介護中心の生活から少し離れられることで、
「介護者」ではなく「娘・息子」としての関係性を大切にできる時間が生まれます。

とはいえ… 罪悪感との戦い
「親を預けた自分は冷たいのでは?」
「“見捨てた”と思われるのではないか?」
そうした罪悪感は、多くの方が一度は抱く感情です。
でも、よく考えてみてください。
一人で背負って倒れてしまっては、元も子もありません。
介護は、長期戦。
施設にお願いすることは、親の命を預けることであり、自分自身を守る手段でもあるのです。
5.「親の気持ち」も忘れずに
施設に入る親御さんにも、さまざまな気持ちがあります。
「家にいたい」
「自由がなくなるのは嫌」
「子どもに迷惑をかけたくない」──
だからこそ、本人の意向をよく聞いてあげることが大切。
見学に一緒に行ったり、パンフレットを見ながら話したり。
段階を踏みながら気持ちをほぐしていくことで、納得のいく選択がしやすくなります。
こんなふうに伝えると◎
・「ちゃんとお世話してくれる人がいるから安心だよ」
・「疲れたら、いつでも帰ってきていいからね」
・「○○さんも入ってて、楽しそうだったよ」
言葉の選び方一つで、親御さんの受け取り方も変わってきます。
6.家族の間で意見が分かれるとき
「私は同居してでも世話したい」
「いやいや、プロにお願いしたほうが安心だよ」
兄弟姉妹、配偶者、親戚…
介護の方向性をめぐって、意見が割れることは珍しくありません。
むしろ、誰もが同じ考えで進む方が稀なのです。
でもそれは、それぞれが、
「親のためを思っている」
「自分たちの生活も大事にしたい」
という気持ちの裏返し。
どちらも、決して間違いではありません。

衝突を避けるには?
❶まずは「聴く」ことから
相手の意見を頭ごなしに否定せず、「そう考える理由」を聞くことから始めましょう。
❷現実的な線引きを明確に
「誰がどこまで関わるのか」
「何にどのくらいお金や時間を使えるのか」を、数字で話すとスムーズです。
❸第三者の力を借りる
ケアマネージャーや地域包括支援センターなど、
感情に左右されない立場の人を交えることで、冷静な話し合いができます。
7.正解は、家族の数だけある
同居にするか、施設にするか──
その正解は、家族の数だけ存在します。
「うちの親には、にぎやかな家の方が合ってる」
「本人は、施設で同年代と過ごす方が嬉しそう」
選ぶ基準は、親の性格・体調・環境・家族の状況によってまったく変わります。
だからこそ、誰かと比べる必要はありません。
あなたとご家族が納得できる道を、一つひとつ、ていねいに見つけていけばいいのです。
「変えていく」こともOK
最初は同居で始めたけれど限界を感じて施設に切り替える。
逆に、施設にいたけど本人が寂しがり、家に戻す。
そんなふうに、状況に合わせて介護の形を変えていくことも、まったく問題ありません。
むしろ、「こうしなきゃ」と思い込まずに柔軟に対応していくことこそ、
介護を続けるうえでの大切な力なのです。
8.まとめ:一番大切なのは「誰も無理をしないこと」
同居にしても、施設にしても、
一番大事なのは、関わるみんなが“無理をしないこと”
親の気持ち、家族の生活、経済的なこと、心の余裕。
どれか一つでも崩れてしまえば、介護は長く続けられません。
だからこそ、
「自分たちにとって最善のかたち」を一緒に見つけることが、
一番の近道なのかもしれません。
どんな選択であっても、そこに「大切に思う気持ち」があれば、
それはきっと間違いではないはずです。
あなたとご家族が、少しでも納得のいく答えにたどり着けますように。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 厚生労働省『介護サービス施設・事業所調査』
- 内閣府『令和6年版 高齢社会白書』
- 公益財団法人 介護労働安定センター『介護労働実態調査』
- 日本在宅医療学会『在宅医療の現状と課題』
- 全国地域包括支援センター協議会『家族介護者支援に関する資料集』
- LIFULL介護『介護施設の選び方ガイド』
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