こんにちは。
ご家族や大切な人の「あれ?なんかいつもと違うな?」という変化。
もしかしたら、認知症の始まりかも…と心配になりますよね。
でもその症状、実は「抑うつ」(うつ病)から来ている可能性もあるんです。
高齢の方の場合、認知症と抑うつの症状がとても似ているので、
プロの方でも見分けが難しいことがあります。
でも、この違いを知っているか知らないかで、その後の対応や治療方法が大きく変わってきます。
「認知症の治療をしていたら、実は抑うつだった」というケースも少なくありません。
今回は早期に適切なケアを始めるためにも、まずはご自宅でできる簡単なチェックポイントを
ご紹介します。

まず押さえたいポイント: どちらにも共通する “よくあるサイン”
認知症も抑うつも、初期のころは「元気がない」という印象が共通しています。
テレビを見ても楽しくなさそうだったり、家事をする気が起きなかったり、誰かと話すことが面倒
に感じたり…これだけ見ると、どちらとも判断がつきにくいものばかりです。
また、「物忘れが増えた」という訴えも両者に共通しています。
たとえば、お薬を飲んだかどうか思い出せない、約束を忘れてしまう、
同じ話を繰り返すなどです。
このあたりも本当に似ていて、家族としても判断に迷うところなんですよね。
でも、実はこの“物忘れの仕方”に見分けるヒントがあります。

抑うつの物忘れは 「覚える力はあるのに思い出せない」
抑うつの場合、頭の働き自体は保たれていることが多いです。
「覚えたい」という気持ちもあるし、理解力も残っています。
ただ、心が疲れてしまっているせいで、記憶を引き出す力が落ちているだけ…
そんなケースがよく見られます。
たとえば「◯◯さんから電話があった気がするんだけど…思い出せないのよね」というような、
“思い出せないけど、覚えている感じはある”という特徴が出ることがあります。
声をかけて一緒に確認すると「ああ、そうだった」と思い出すことも多いんです。
認知症の物忘れは 「覚えていないこと自体を覚えていない」
認知症の物忘れの特徴は「そもそも覚えていない」、
「忘れたことそのものを忘れている」という点です。
ここに、見分けるための大きなヒントが隠れています。
これが抑うつとの大きな違いになります。
たとえば、「朝ごはんを食べたこと自体を覚えていない」
「約束をした記憶が丸ごと抜け落ちている」というように、
出来事そのものがスッポリと抜け落ちてしまうんです。
しかも、思い出せないことに対して本人があまり困っていないように見えることもあります。
家族としては「さっき言ったのに…」と思ってしまう場面も多いですが、
本人は悪気があるわけではないんですよね。
このように、抑うつ=思い出せない/ 認知症=そもそも覚えていないという違いは、
見分けるうえでとても大事なポイントになります。

もうひとつの大きな違い: 「自分で気づいているかどうか」
抑うつの方は、自分の変化に敏感なことが多く、「最近どうも元気が出ない」
「頭が働かない感じがするの」と、ご自身で不調を訴えるケースがよくあります。
一方、認知症の初期では、自分の変化になかなか気づけないことが多いです。
中には「自分は大丈夫」と強く言い張る方もいますが、これも病気の一部なんですよね。
この“気づけるかどうか”という違いは、介護者にとって判断のヒントになります。
ただし、本人を追い詰めるように問い詰めると逆効果になるので、
あくまでそっとした観察がポイントです。
見分けるためにチェック方法を試してよう!
チェック1: 記憶力の落ち方は「ムラ」or「一貫」?
これは一番分かりやすいポイントかもしれません。
抑うつの場合:
思い出せないことを指摘されると、「あぁ、そうだった!」と思い出せることがよくあります。新しいことを覚える力自体は比較的保たれていて、思い出そうとする意欲の低下や、集中力の低下が原因のことが多いです。テストなどで「頑張って思い出して」と促されると、思い出せるムラがあります。
認知症の場合:
脳の機能自体が損傷しているので、ヒントがあっても「全く見当もつかない」という状態になります。新しい経験(例:昨日の夕食)そのものが記憶として定着していないため、思い出せるムラがなく、一貫して覚えていません。
チェック2: 感情の落ち込みは「いつから」始まった?
認知症も抑うつも感情が落ち込みがちですが、その「始まり」の時期を比べてみて下さい。
抑うつの場合:
「○月のあの出来事から、急に元気がなくなった」というように、比較的はっきりとした始まりがあることが多いです。また、その感情の落ち込みを自覚しており、「私はダメだ」「生きている価値がない」といった自己否定的な言葉が多く出ます。
認知症の場合:
「いつから始まった」という境界線が曖昧で、徐々に進行していきます。感情の起伏が鈍くなることが多く、初期の段階では、記憶力の低下を隠そうとしたり、ご自身の異変に無関心であったりする傾向が見られます。
チェック3: 質問された時の「受け答え」の傾向は?
簡単な質問をいくつか投げかけてみてください。その時の反応に大きな違いが出ます。
抑うつの場合:
「思い出せない」「分からない」と訴えるものの、答えに困ると「考えるのをやめてしまう」、「無気力で答えるのを拒否する」といった様子が見られます。これは、抑うつによる意欲の低下や集中力の欠如が原因です。質問に対して真剣に向き合うのが辛い、という状態です。
認知症の場合:
記憶が抜け落ちているため、分からないことを聞かれると、辻褄が合わない答えを言ったり、別の話でごまかそうとしたりします。これは、ご自身の記憶の欠損を無意識のうちに「取り繕う」という行動で、本人は間違っているという自覚がないことが多いです。
チェック4: 生活の中で「意欲」が失われている場所は?
どちらも「やる気がない」ように見えますが、その範囲が違います。
抑うつの場合:
趣味や好きなテレビ番組、交流など、あらゆることに対して興味を失ってしまいます。「今まで楽しんでいたこと」も「全てどうでもいい」と感じてしまうのが特徴です。また、食欲不振や不眠(特に早朝覚醒)といった身体的な症状を強く訴えることも多いです。
認知症の場合:
意欲が低下するのは主に「新しいこと」や「複雑な作業」です。ただ、慣れ親しんだ行動(食事、散歩、昔からの趣味など)には、ある程度の関心や意欲が残っていることがあります。また、初期段階では、食欲や睡眠のリズムが極端に乱れることは少ないです。
チェック5: 「時間や場所」の感覚は?
時間や場所の認識に混乱が見られるかも大切なポイントです。
抑うつの場合:
感情の落ち込みや集中力の低下はあっても、「今が何年何月か」「ここが自宅であること」といった基本的な見当識(時間や場所の認識)は保たれています。
認知症の場合:
初期段階から、日付や曜日が分からなくなる、慣れた道で迷うといった見当識障害が見られることがあります。
いかがでしたか?
これらの違いを知ることで、対応の仕方も変わってきます。
専門職に相談するタイミングはいつ?
認知症と抑うつは、家族だけで見分けるのがとてもむずかしいものです。
だからこそ、「少しでも気になる変化が続いたら」専門職に相談することが
とても大切なんです。
たとえば、元気のなさが数週間〜1か月ほど続いている。
物忘れが以前より明らかに増えてきた。
表情が固くなり、笑顔が減ってしまった。
こんなサインが見えてきたら、早めに動くのが安心です。
相談先としては、かかりつけ医、地域包括支援センター、もの忘れ外来などがあります。

家族にできるサポート:認知症でも抑うつでも大切なこと
認知症と抑うつは違う病気ですが、どちらに対しても共通して大切なことがあります。
それは、「安心できる環境をつくること」です。
焦らせたり、間違いを責めたりすると、不安が大きくなってしまいます。
ゆっくり話を聞いたり、できたことを一緒に喜んだり、
日常の中で小さな安心を積み重ねるだけでも、心はずっと軽くなるものなんです。
まとめ: 見分けることより“寄り添うこと”が大切
認知症と抑うつは、症状の一部がとても似ています。
物忘れの仕方、気づきの有無、行動パターンなどに違いはありますが、
大切なのは、「何か変化があったとき、そのままにしない」という姿勢です。
早めに相談し、必要なサポートにつなげることで、本人の生活はぐっと楽になります。
そして、見分けようと必死になるより、そばで温かく見守ることのほうがずっと力になります。
あなたの存在そのものが、本人にとって心の支えなんです。
優しいまなざしで見守りながら、無理のない範囲で寄り添っていけたらいいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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参考
- 「認知症施策」厚生労働省
- 「認知症に関する国際情報」WHO
- 「うつ病と認知症の違いと治療法」梅本クリニック
- 「認知症の初期症状とうつ病との違いは?」健達ねっと
- 「精神疾患と認知症その共通点とは?」みぞぐちクリニック





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