こんにちは。
「介護施設で職員による高齢者への虐待が発覚」
そんなニュースが流れるたびに、心がざわつく方も多いのではないでしょうか。
親を施設に預けている家族として、「まさか、うちの親は大丈夫だろうか…」
と不安になる気持ちは当然です。
介護職員の多くは献身的に働いていますが、
ごく一部に不適切な対応をする職員が存在するのも現実。
虐待とまでは言えなくても、
「あれ?これって…」と疑問を抱くような場面もあるかもしれません。
本記事では、「施設での虐待の実態」「よくある虐待のサイン」
「そして親が被害に遭っていないかを見極める方法」について、
分かりやすく、やさしい視点でお伝えします。

介護施設における虐待とは?
まず、「虐待」とはどのような行為を指すのでしょうか。
厚生労働省では、以下のような行為を介護施設での虐待と定義しています。
- 身体的虐待:叩く、つねる、必要以上の身体拘束を行う
- 心理的虐待:暴言、無視、大声で怒鳴るなど
- 性的虐待:性的な嫌がらせや不適切な接触
- 介護放棄・放置:食事を与えない、排せつの介助をしない
- 経済的虐待:本人の金銭や財産を無断で使用する
こうした行為は、高齢者の尊厳を深く傷つけ、身体的・精神的な苦痛をもたらします。
しかし、これらの行為はすぐに表面化しづらく、発覚するまでに時間がかかることも多いのです。

なぜ虐待が起きるのか?背景にある現場の課題
ほとんどの介護職員は真面目で一生懸命です。
にもかかわらず、なぜ虐待が起きてしまうのでしょうか。
その背景には、以下のような複合的な要因が考えられます。
- 慢性的な人手不足
- 職員のストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)
- 介護スキルやコミュニケーションの未熟さ
- 利用者との相性や対応の難しさ
- 施設内の風通しの悪さ・内部通報しにくい体質
介護の現場は、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
余裕がなくなり、心のブレーキが利かなくなることで、
虐待という行動に繋がってしまうこともあるのです。
表に出にくい“グレーゾーン”の対応
明らかな暴力や放置だけが虐待ではありません。
たとえば、こんな言動も、積み重なると心理的虐待にあたることがあります。
- 「また失敗したの?ほんと手がかかるね」とため息交じりに言う
- 排泄の失敗をからかうように笑う
- 食事中に「早くしてよ!」と怒鳴る
こうした“言葉の暴力”は外からは見えにくく、
本人も「自分が悪いんだ」と受け止めてしまうことが少なくありません。
また、介護記録にきちんと書かれていなかったり、表情だけでは分かりづらいことも多いため、
家族が気づくのは難しいケースが多いのです。
家族が気づくべき“虐待のサイン”とは?
介護施設での虐待は、決して珍しい話ではありませんが、
本人が「つらい」と言い出せないことが多いため、家族の気づきがとても重要になります。
では、どんな変化があれば「おかしいな?」と感じるべきなのでしょうか。

①身体に不自然なあざや傷がある
「転んだ」と説明されても、同じ場所に何度も傷ができていたり、
明らかに手の跡のようなアザがある場合は注意が必要です。
②服や下着が汚れているまま放置されている
面会時に、「服が濡れている」「下着が汚れているのに着替えさせてもらっていない」
といった状況が見られる場合、適切なケアがなされていない可能性があります。
③表情が乏しくなった、無口になった
以前は明るかった親が急に無表情になったり、話しかけても返事が少なくなるなど、
性格の変化が見られる場合は要注意です。
④「帰りたい」「あの人が怖い」と口にする
漠然とした不安や、特定の職員を避けるような言動があれば、
心理的な負担を抱えているサインかもしれません。
⑤面会を制限される・職員の対応が不自然
「今日は忙しいので面会は無理です」と何度も断られたり、
職員がピリピリした様子で接してくるような場合、何かを隠そうとしている可能性もあります。
こうした小さな違和感を見逃さず、定期的に様子を見ることが大切です。
親にさりげなく聞いてみるときの工夫
高齢の親が、施設でのトラブルや不満をなかなか言えない理由はたくさんあります。
- 「言ったら嫌われて、もっとひどいことをされるかもしれない」
- 「私がわがままなんじゃないかしら」
- 「職員さんは忙しそうだし、迷惑をかけたくない」
そんな気持ちがあるからこそ、聞き方にも気をつけたいところです。
安心感を与える聞き方の例
- 「最近どう?ごはんはおいしい?」
- 「お部屋、寒くない?夜はよく眠れてる?」
- 「みんな優しくしてくれてる?」
こうした日常会話の延長線で、さりげなく気持ちを聞き出すことがポイントです。
無理に「何かされてない?」と詰め寄るのではなく、
ゆっくり安心できる環境で会話をすることが、親が本音を話しやすくするコツです。

職員の対応から見る“違和感”
親の様子だけでなく、施設職員の態度や対応も、虐待リスクのサインになることがあります。
- 親の状態を尋ねても答えがあいまい
- 顔を合わせないようにする職員がいる
- こちらの質問に苛立ちを見せる
- 記録や書類の提示を渋る
もちろん、すべてが“怪しい”わけではありませんが、「隠したい」「知られたくない」
と思っているときに出やすい対応でもあります。
違和感を覚えたら、すぐに行動を起こすことが大切です。
もし「虐待かも」と思ったら、どうすればいい?
「これって虐待なのかもしれない…」
そう感じたときに、家族としてできる対応を具体的に整理しておきましょう。
①まずは記録を取る
気になる様子や職員との会話、日付、写真など、可能な限り記録を残しておきましょう。
曖昧な印象よりも、具体的なエピソードがあると、相談や通報の際に役立ちます。
②施設の相談窓口に伝える
まずは施設の相談窓口や、責任者(施設長、ケアマネジャー)に状況を冷静に伝えましょう。
ただし、直接感情的に訴えるとトラブルになりやすいため、
できるだけ客観的な視点で事実を確認する姿勢が大切です。
③第三者機関に相談・通報
施設側の対応に納得できなかった場合は、以下のような第三者機関に相談する方法があります。
- 地域包括支援センター
- 各自治体の介護保険課・高齢福祉課
- 高齢者虐待防止センター
- 介護保険サービスの苦情受付(国民健康保険団体連合会など)
通報したことで「親がもっと嫌がらせを受けたら…」と心配される方も多いですが、
通報者が家族であることを伏せたまま対応してくれるケースもあります。
“虐待”を未然に防ぐ関係づくり
家族としてできるのは、「見張ること」ではなく、「つながりを持ち続けること」です。
- 定期的に面会や連絡を取り、職員とも会話を交わす
- 感謝の気持ちを伝える(例:「いつもありがとうございます」)
- 親のちょっとした変化に気づいたら相談する
こうした積み重ねが、
「このご家族は見ていてくれる」「気づいてくれる」というメッセージとなり、
施設側にも緊張感や安心感を与えることにつながります。
最後に:不安を放置しないことが大切
虐待はあってはならないこと。
ですが、「うちは大丈夫」と思い込んでしまうこともまた、危険な落とし穴です。
もし、あなたが「何かおかしい」と感じたなら、
それはきっと“無視してはいけないサイン”です。
不安や疑問を抱いたとき、まずは家族として
「気にすること」「声に出すこと」から始めてみてください。
そして、必要ならためらわず、しかるべき窓口に相談しましょう。
虐待を防ぐ一番の方法は、「関心を持ち続けること」。
その目が、あなたの大切な人を守る力になります。
どんなときでも、「親を守れるのは自分だけじゃない」ということを忘れずに、
無理をせず、必要な助けを借りながら歩んでいきましょう。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 内閣府「高齢者虐待の実態調査報告書」
- NHKハートネット「施設での高齢者虐待 どう気づく?」特集
- 東京都福祉保健局「高齢者虐待のサインと家族ができること」
- All About介護「虐待かも?と思ったときの相談先と行動手順」
- 日本弁護士連合会「高齢者虐待と法的対応」ガイドライン
- 厚生労働省「高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査(令和5年度)」
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