こんにちは。
在宅介護で必ずといっていいほどぶつかるのが、「トイレの問題」。
排泄って、ものすごくプライベートでデリケートなこと。
だからこそ、本人にとっても、介護する側にとっても、気を遣うし、
心がすれ違いやすい部分なんですよね。
「また間に合わなかった…」
「布団まで濡れてしまって、つい怒ってしまった…」
そんな経験がある方も、きっと少なくないと思います。
でも、失敗は責めるものじゃなくて、“工夫”で変えていけるものなんです。
今回は、在宅介護におけるトイレ問題と、
失敗を責めずに向き合うためのやさしい工夫について、一緒に考えていきましょう。

1.「トイレ問題」が起きる理由
まずは、なぜトイレの失敗やトラブルが起きるのか?
その背景には、いくつかの原因があります。
① 身体的な衰え
加齢や病気によって、足腰が弱くなると、トイレまでの移動が難しくなってきます。
さらに、排尿や排便の感覚自体が鈍くなることもあるんです。
「行こうと思ったときには、もう間に合わなかった」なんてことも、よくあります。
② 認知機能の低下
認知症の方の場合、トイレの場所が分からなくなったり、
排泄のタイミングが分からなくなることがあります。
中には、「トイレに行ったことを忘れてしまう」ケースもあるので、
失敗は“うっかり”や“忘れ”の積み重ねだったりするんですね。

③ 恥ずかしさやプライド
大人として、長年自立してきた人が、トイレの失敗をすることはとてもショックです。
「もうこんなこともできなくなったのか…」
「情けない…」
そんな思いから、我慢してしまったり、隠してしまったりすることも。
気づいたときには失禁していた、なんてことも多いです。
2.介護する側の本音も、大切にしていい
正直な話、トイレの失敗の後始末は、精神的にも体力的にもとても大変です。
掃除に洗濯、本人の着替えや声かけ…
それが1日に何回もあると、「なんで…!」と心の中で叫びたくなることもありますよね。
でも、そんなふうに思ってしまう自分を責めなくていいんです。
介護をしている人が、イライラしてしまうのは当然のこと。
疲れているときほど、心がとがりやすい。
だから、自分の気持ちに気づいてやさしく認めてあげることも、大切なケアのひとつなんです。

3.環境を整えるだけで、トイレの成功率はぐんと上がる
「また失敗したらどうしよう…」
そんな不安を減らすためには、本人の感覚や動作を補う“環境づくり”がとっても大切です。
トイレまでの移動距離を短くする
トイレが遠いと、それだけでハードルが高くなります。
可能であれば、寝室の近くにポータブルトイレを設置するのもひとつの方法です。
夜間の失敗が多い場合、廊下に足元灯をつけるだけでも、安心感が全然違いますよ。
声かけのタイミングを工夫する
本人が「行きたい」と言うのを待っていると、すでに間に合わないこともあります。
食後や起床後など、生活リズムに合わせたタイミングで声をかけることで、
トイレ誘導の成功率がアップします。
たとえば、
「ご飯食べたし、ちょっとお手洗い行っておこうか?」
「寝る前にトイレ行っておくと安心だよ」
といった、自然な声かけがポイントです。
衣類の工夫も大事なポイント
ボタンが多い服や、ベルト付きのズボンは、トイレでの動作を難しくする原因になります。
介護される側が自分で脱ぎ着しやすい服を選ぶだけで、失敗の回数が減ることもあります。
マジックテープのズボンや、伸びる素材のパンツなど、
「本人が自分でできる」をサポートする服選びも大切ですね。

トイレの中の工夫
・便座の高さが合っていない
・手すりがなくて不安定
・トイレットペーパーが取りにくい位置
こういった小さなストレスが、排泄を嫌がる原因になることもあります。
介護保険で使える福祉用具レンタルや住宅改修制度もあるので、
必要があればケアマネさんに相談してみましょう。
4.失敗を責めないコミュニケーションのコツ
トイレの失敗があったとき、咄嗟に「また?」って言いたくなる気持ち、本当によく分かります。
でも、そこでグッとこらえて、やさしい声かけに切り替えるだけで、
お互いの心の傷つき方がぜんぜん違うんです。

NGワードに注意しよう
・「また失敗したの?」
・「ちゃんと教えてって言ったでしょ」
・「何回言えば分かるの?」
こういった言葉は、本人のプライドや自信を深く傷つけてしまうことがあります。
代わりにこんな言葉をかけてみよう
・「大丈夫だよ、誰にでもあることだし」
・「寒かったから、間に合わなかったかな?」
・「こっちの準備が間に合わなかったね、ごめんね」
あえて介護する側の気持ちとして言うことで、責めていないことが伝わります。
何よりも大事なのは、「失敗しても大丈夫だよ」って空気をつくることなんです。
5.オムツの使用は「諦め」じゃなくて「選択肢」
「オムツを使うなんて…」
そんなふうに、本人も家族も抵抗感を持つことがありますよね。
でも、オムツは尊厳を奪うものではなく、暮らしを守る道具のひとつなんです。
漏れを防いだり、夜ぐっすり眠れたり、介護する側の負担が軽くなるという面も大きいです。
本人の気持ちも尊重しながら
「まだトイレでできるから使いたくない」
「オムツなんて恥ずかしい」
そんな気持ちは、ごく自然なもの。
だからこそ、強制せず、少しずつ慣れてもらう工夫が必要です。
たとえば、
・「パンツタイプ」から始めてみる
・トイレに間に合わない時間帯だけ使ってみる
・「もしもの時のために使うね」と伝える
そんなふうに、本人のプライドを守りながら寄り添う言葉があると、受け入れやすくなりますよ。
7.おわりに
在宅介護におけるトイレの問題は、体だけでなく心にも大きく影響します。
・移動やタイミングの工夫で失敗を減らすことができる
・声かけや環境整備で本人の尊厳を守ることができる
・怒らずに受け止めることで関係がギクシャクせずに済む
そして何より大切なのは、介護するあなた自身が、自分にもやさしくすることです。
どうか、自分を責めずに。
どうか、がんばりすぎずに。
今日もうまくいかなかったとしても、
「また明日、ちょっとだけ工夫してみよう」
そんな気持ちで十分です。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 公益財団法人 長寿科学振興財団「高齢者の排泄ケア」
- 厚生労働省「認知症の理解と対応(家族介護者向け手引き)」
- 東京都福祉保健局「在宅での排泄介助の工夫と支援」
- 介護労働安定センター「在宅介護で役立つ福祉用具の活用事例集」
- 日本排泄ケア研究会「排泄ケアの基本と実践」
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