はじめに:親の気持ち、わかってあげたいけど難しい
こんにちは。
「介護サービスを使ってほしいけど、親が嫌がる…」「使い始めたけど、なんだか不機嫌そうで…」
そんな風に感じたこと、ありませんか?
介護が必要になってくると、どうしても子どもとして「ちゃんと受けてもらったほうが安心」と思ってしまいます。でも、当の親はなぜか拒否反応。
この記事では、介護サービスを利用したことで、親の気持ちがどのように変化するのかを、実際の声や事例を交えて、やさしく紐解いていきます。

介護サービスを使う前の親の気持ちとは?
介護が必要になってきたとき、多くの親世代が感じるのは「まだ人の手なんて借りたくない」「迷惑をかけたくない」という気持ちです。
これは、“プライド”だけではなく、「自立していたい」「子どもに世話を焼かせたくない」という深い思いやりから来ていることも多いのです。
また、「他人に家に入られるのが恥ずかしい」「慣れない人との会話が億劫」といった、環境や人間関係への不安も大きな要因の一つ。
高齢になるにつれて、生活リズムや空間が“自分だけの大切な世界”になるため、その中に他人が入ってくることへの抵抗感はとても自然なことなのです。
老いを自覚することへの戸惑い
介護サービスを利用することは、多くの高齢者にとって「自分がもう以前のように動けない」という現実と向き合う瞬間でもあります。
これまで自立していた自分の姿と、今の自分とのギャップに戸惑い、「まだ大丈夫」と強がったり、「もうダメなのか」と落ち込んだりすることも。
そうした感情のゆらぎを受け入れ、少しずつ「助けを借りてもいい」「これも一つの生き方」と思えるようになるには、時間と信頼関係が必要です。

介護サービスを使ってみた後、親の気持ちはどう変わる?
最初はやっぱり不安や抵抗感がある
初めて介護サービスを使うとき、多くの方は戸惑います。
「知らない人に世話をされるなんて…」と最初は表情もかたく、会話も少ないことが多いです。
でも、それは“慣れていないだけ”ということも多く、時間とともに少しずつ変化していきます。
とくに、サービスを利用する“きっかけ”が本人の希望ではなく、家族の判断で始まった場合は、「押しつけられた感覚」を抱いてしまうこともあります。
そのため、本人の気持ちを丁寧に聞きながら、サービスの目的や内容をしっかり説明してあげることが大切です。
安心感や自己肯定感が戻ってくることも
慣れてくると、介護スタッフとの会話を楽しむようになったり、「今日は〇〇さんが来る日か」と嬉しそうに準備を始める方もいます。
「誰かが自分を気にかけてくれる」「話を聞いてもらえる」という安心感が、親御さんの気持ちを穏やかにしてくれるのです。
また、「できないところだけ助けてもらえればいい」というスタンスで、自分らしさを保ちながら過ごせるようになると、自尊心も保たれます。
日々のちょっとした「ありがとう」「助かったよ」という声が、親の心に少しずつ灯をともしていくのです。

社会との再接続という意味
デイサービスや訪問介護などの介護サービスは、親御さんにとって「社会とつながる機会」にもなります。
他人との会話、同年代とのふれあい、外出のきっかけなど、家の中だけでは味わえない刺激が心に新しい風を運んでくれるのです。
「こんなことがあったよ」と家族に話す姿には、まるで学生が学校の話をするような生き生きとした表情が見られることもあります。
自分の役割を再確認するケースも
介護サービスを利用する中で、「自分が何をできるか」を考え始める親御さんも多いです。
「まだ自分で料理はできるよ」「洗濯は自分のペースでやるね」と、自分にできることを確認しながら、日常に張り合いを持つようになることも。
「手を借りる=すべてを任せる」ではなく、「必要な部分だけ助けてもらう」という気持ちの整理ができると、心のバランスが整い、自分自身の生活を前向きに捉えられるようになるのです。

実際にあった体験談から見る親の気持ちの変化
ケース①:頑なだった母が、ヘルパーさんを「友達」と呼ぶように
最初は「他人に家を見られるなんて嫌」と言っていた母。
でも、優しく丁寧に接してくれたヘルパーさんに少しずつ心を開き、「この人は信用できる」「話してると楽しい」と感じ始めたようです。
ヘルパーさんの人柄や言葉のトーン、気配りが、母の警戒心をほぐしてくれました。
数ヶ月後には「友達が来る日」と言って楽しみにするようになり、身なりを整えて待つ母の姿に、家族も驚きと嬉しさを感じました。
ケース②:「迷惑かけたくない」が「ありがとう」に変わった父
もともと無口で「お前たちに世話になるのは情けない」と言っていた父。
でも、デイサービスで同年代の人と過ごすことで、「意外と悪くないな」「自分だけじゃなかったんだ」と気持ちが少し軽くなったようです。
帰宅後、「今日は〇〇さんと話した」「久しぶりに将棋できた」と、ぽつりぽつりと話すように。
最後には「助かった、ありがとう」と言葉にしてくれたのが、忘れられません。

子ども側ができる心のサポートとは?
親の気持ちが変わるには「時間」と「信頼」が必要です。
焦って無理に勧めるよりも、「体験だけでもしてみようか?」「嫌だったらやめてもいいよ」と、選択肢を渡すスタイルが◎。
「利用すれば親も楽になる」と思ってしまいがちですが、親にとっては“自分の役目を失う不安”や“老いを受け入れるつらさ”が背景にあることも。
だからこそ、否定せず、「今の気持ち、教えてね」と寄り添う姿勢がとても大切です。
また、サービス利用後には「どうだった?疲れなかった?」「ちょっと安心したよ、ありがとうね」と気持ちを受け止めてあげましょう。
小さな“感謝の言葉”や“見守り”が、親の心に大きな安心をもたらします。
親の変化に気づくコツ
ときには、何も言わないけれど、表情が明るくなっていたり、身なりを気にするようになっていたりと、小さな変化が見られることも。
「最近、よく笑うようになったね」「前より元気そうだね」そんな言葉が、親御さんの自信に変わっていきます。

まとめ:親の「変化」に寄り添いながら、焦らず一歩ずつ
介護サービスは、ただの「手助け」ではありません。
親御さんの心の中での変化を引き出す、大きな“きっかけ”にもなります。
はじめは戸惑いや不安があっても、それを乗り越えた先には、「安心」や「笑顔」が待っているかもしれません。
大切なのは、親の気持ちを否定せず、少しずつ背中を押してあげること。
焦らず、比べず、その人のペースで一緒に歩んでいくこと。
あなたのその優しさが、きっと親御さんの気持ちを温めてくれます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 高齢者は「体力の衰えや環境の変化、将来への不安」から孤独感や戸惑いが強まる傾向があると報告されています。
- 介護が始まると、親世代は老いへの気づきに戸惑い、「まだ大丈夫…」と強がる一方で「もうダメかも…」と落ち込むこともあります。
- 介護サービスは、家に閉じこもりがちな高齢者にとって社会との接点を再び持つ重要な機会となり、日常に新しい刺激や安心感を与えることが報告されています。
- 介護開始時には不安や抵抗感が大きく、家族の判断によるスタートは「押しつけられた感覚」を与えることもあるため、丁寧な説明と選択肢の提示が重要です。
- また、介護を続けるうちに小さな感謝の言葉や表情・暮らしの変化に家族が気づくことで、親心にも自信や安心感が返ってくることが多く見られます。
- 「介護者(子ども側)」は、最初に混乱・否定・不安を抱えますが、安定期には「受容」へと気持ちが静まり、生活に余裕が出ることも報告されています。
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