こんにちは。
「同じ日本なのに、どうしてこんなに差があるの?」
これは、介護に関わる多くの人が感じる疑問です。
特に「都会と地方では、受けられる介護サービスに差がある」と感じる場面は少なくありません。
今回は、そんな地域差の実態と、その背景にある事情をわかりやすくご紹介します。
都会と地方でどう違う?介護サービスの基本事情
1. 事業所の数が圧倒的に違う
まず大きな違いは、「サービス提供事業所の数」です。
都市部では、デイサービス・訪問介護・訪問看護・ショートステイなど、
選択肢が豊富にあります。
それに対して地方では、「選べるほど施設がない」「最寄りの事業所まで車で30分かかる」
といったケースが珍しくありません。
これは人口密度の違いに加え、
事業者が参入しやすい条件(人手確保、利益率など)が影響しています。

2. サービス開始までのスピード
都市部では、施設やサービスの選択肢が多いため、
比較的スムーズに利用開始できる傾向があります。
一方、地方では「空きがない」「人手不足で受け入れられない」といった理由で、
希望するサービスにすぐつながらないケースが多くあります。
例えば、「デイサービスを使いたいけど今は3か月待ち」といった状況も地方ではよくあります。
3. サービスの質・専門性
都市部では、医療ニーズの高い方を対象にした「医療対応型デイサービス」や、
リハビリ特化型の施設、認知症専門ユニットなど、専門性の高いサービスが増えてきています。
一方で地方は、どうしても「多機能型」や「一般向け」のサービスに集約される傾向があり、
専門的な支援が必要な場合に選択肢が限られるケースがあります。

4. ケアマネジャーの数と質
ケアマネジャーは、介護の「道しるべ」を担う存在。
しかし、都市部では経験豊富なケアマネが多数在籍する事業所も多い一方、
地方では慢性的な人材不足が課題です。
地域によっては、ケアマネ1人が100人以上の利用者を抱えていたり、
若手が定着せずに経験不足のまま現場に出ざるを得ないケースもあります。
「介護が必要」=「すぐ使える」とは限らない現実
全国共通の制度である介護保険ですが、
実際には「地域によって全然違う」と感じる利用者も多いのが現状。
その背景には、制度と現場の“ズレ”が存在しています。
その地域差がどうして生まれるのか、制度的な仕組みとあわせて詳しく見ていきましょう。
地域で差が出る理由とは?制度と実情のギャップ
1. 地域密着型サービスの限界
介護保険制度の中には、「地域密着型サービス」という枠があります。
これは、利用者の住んでいる市区町村内でしか利用できないサービスを指します。
たとえば、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型グループホームなどがこれに当たります。
この制度は「地元で暮らし続けたい」という希望を支える仕組みですが、地方ではそもそも
該当する施設がなかったり、数が少ないことで“選べない”という現実があります。
2. 人口構成の違い
都会は若い世代も多く、働き手や支援者が一定数います。
一方、地方では高齢化率が高く、支える人が圧倒的に足りていません。
介護サービスを提供する側の人手不足が深刻化しており、
「事業を始めたくても人材が集まらない」という声が後を絶ちません。

3. 行政の支援体制や予算の違い
介護保険サービスは全国共通の制度ですが、
「どう整備するか」「どう広報するか」は自治体の裁量に大きく左右されます。
都会では、情報提供が充実していたり、相談窓口が複数あるケースも。
一方で、地方では「包括支援センターが1か所しかない」
「広報が不十分で制度自体を知らない住民が多い」などの課題が見られます。
4. 地域性による「暗黙のルール」
都会では「介護はサービスを活用して乗り切ろう」という意識が強い一方、
地方では「家族で見るのが当たり前」「人に頼るのは恥ずかしい」
という空気感が残っていることもあります。
こうした文化や価値観の違いも、実際のサービス利用率に影響を与えています。
実際にあった地域差エピソード
事例① 都会の母、地方の娘
東京に住む母親が、地元の介護付き有料老人ホームに入りたいと希望。
娘が住む地方では入居施設が非常に少なく、希望に合う施設はすべて満室。
結局、母親は東京での在宅介護を続けることに。
「都会の方が選択肢が多くて羨ましい」と娘さんは話していました。
事例② 地方での“空白地帯”
ある地方の町では、訪問看護事業所が一つしかなく、職員も3人程度。
重度の介護が必要になった高齢者は、看護ケアを受ける手段が限られていました。
「家族が通院で対応するしかない」と言われ、息子さんが仕事を辞めて看護を引き受けることに。
本来ならサービスで支えられる部分が、
地域差によって“家族頼み”になってしまうこともあるのです。

事例③ 同じ都道府県内でも大きな差
「県内ならどこでも同じだろう」と思っていたAさん。
実際には、隣の市ではリハビリ型デイサービスが数件あるのに
自分の市には一つもないことが判明。
市町村ごとの財政状況や人口動態により、同じ県内でも大きな差が出ることがあるのです。
介護の“地域格差”は存在する
これらの実例からも分かるように、介護サービスは制度上は平等でも、「実際に使えるかどうか」
は地域の事情に大きく左右されます。
こうした地域差にどう向き合い、どんな工夫でカバーできるかを考えていきます。
地域差を埋めるためにできること
1. 地域包括支援センターを積極的に活用する
どんな地域にも1つは設置されている「地域包括支援センター」。
ここは高齢者や家族の相談窓口であり、
ケアマネジャーや保健師、社会福祉士などが常駐しています。
「うちの町ではどんなサービスが使える?」「施設は足りてる?」といった素朴な疑問から、
申請の手続き、紹介先の案内まで、地域に合った情報を教えてくれます。
まずは1本電話をかけるだけで、今いる地域の“現実”が見えてくるかもしれません。
2. 地域外のサービスを視野に入れる
住んでいる市区町村に希望のサービスがない場合、周辺地域を含めた検討も有効です。
たとえば、「隣町には空きのある施設がある」「車で30分圏内にリハビリ特化型デイがある」など
少し範囲を広げるだけで可能性が広がることがあります。
市をまたぐと使えないサービスもありますが、多くの施設は近隣地域にも対応しているため、
あきらめずに相談してみましょう。

3. オンラインやテレケアの導入
都市部に比べて医療・介護の資源が限られる地方では、
最近オンラインのサポートが注目されています。
・医師のオンライン診療
・リモートでのリハビリ指導
・家族のオンライン面会や相談窓口
インターネット環境さえあれば、地域差をある程度カバーできる新しい仕組みです。
「遠隔ケアなんて難しそう…」と感じる方も多いですが、
地域包括支援センターやケアマネに相談すると導入事例を紹介してくれることもあります。
4. 介護者同士の横のつながりを持つ
地域に同じような悩みを持つ仲間がいると、それだけで心強く感じられます。
・家族介護者の集まり(市の主催)
・地域の介護者サロン
・SNSやオンラインコミュニティ
「この地域ではどうしてる?」「あの施設、実際どう?」
といったリアルな情報が得られるだけでなく、孤立感も和らぎます。

地域に合った介護のスタイルを探そう
大事なのは、「都会と同じようにしなきゃ」と無理に合わせようとすることではありません。
それぞれの地域には、その土地ならではの良さや、活用できる仕組みがあります。
たとえば…
- 人との距離が近い地方だからこそ、助け合いがスムーズにいく
- 施設は少なくても、顔が見える関係で安心して利用できる
- 地元の包括支援センターが親身に相談に乗ってくれる
完璧なサービスが揃っていなくても、工夫と情報で補える部分はたくさんあります。
まとめ:知っておきたい“地域に合った介護”の選び方
全国一律の制度であっても、介護サービスの“使いやすさ”や“選択肢の多さ”は、
地域によって驚くほど違います。
大切なのは、自分が住んでいる地域の特徴を知ること。
そして、その中で「今できる最善」を見つけていくことです。
介護は、情報とつながりで選択肢が広がります。
「うちは田舎だから仕方ない」とあきらめず、
「じゃあ、何ができるかな?」と考えることが、地域差を乗り越える第一歩です。
この記事が、あなたやご家族の介護生活を少しでも前向きに進めるきっかけになりますように。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 厚生労働省|介護サービス施設・事業所の地域分布状況
- 総務省|過疎地域における高齢者福祉の実態調査
- みんなの介護|都会と地方の介護格差について
- 日本経済新聞|地域差広がる介護の現場、担い手不足の実態
- 介護労働安定センター|地域ごとの介護人材不足と定着状況
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