こんにちは。
今日は、介護を受ける方が感じやすい「孤独感」について、
そしてその心に寄り添うために家族ができることを、一緒に考えていきたいと思います。
私たちは、介護の話をする時、どうしても「する側」の苦労に注目しがちです。
確かに、介護には肉体的にも精神的にも負担がかかりますし、
それは決して軽いものではありません。
でも、今回はすこしだけ視点を変えて――「される側」の気持ちに寄り添ってみましょう。

1.「寂しい」って、なかなか言えない
高齢になって体の自由がきかなくなったり、
病気の後遺症で思うように話せなくなったりすると、
人との関わりがぐんと減ってしまいます。
外に出る機会も少なくなり、
「話すこと」と「聞いてもらうこと」のバランスが崩れてしまうんですね。
実は、介護される方が一番感じやすいのが、「自分が何にも役に立てていない」と思うこと。
それが、じわじわと「孤独感」へ繋がってしまうんです。
「ありがとう」「いてくれて嬉しいよ」そんなふうに言われるだけで、
「自分にはまだ意味がある」と思えるのに…
本人の方からは、なかなか「寂しい」なんて言い出せません。
気をつかってしまうからです。
2.「介護される=我慢すること」だと感じてしまう現実
介護される立場になると、
「迷惑をかけてはいけない」
「手を煩わせたくない」
「我慢しなきゃ」と思う方がほとんどです。
「お世話してもらってるし、文句なんて言えない」
「痛いって言ったら申し訳ない」
「娘(息子)は仕事で疲れてるのに、わたしなんかの話…」
本音の一歩手前で、言葉を飲み込んでしまう――
そんな日々が続くと、心の奥にポツンと空洞のような「孤独」が生まれていきます。

3.家族がまず気づいてあげたいこと
大切なのは、「何かしてあげること」よりも、まずはその人の“気持ち”に気づくこと。
そして、それを「わかってるよ」「感じてるよ」と、さり気なく伝えてあげることなんです。
それは、特別なことじゃありません。
ほんのひとこと、何気ないやりとりの積み重ねが、孤独感をそっと和らげる力を持っています。
4.「話を聞く」以上に大切なこと
介護される側の方は、ただ話を聞いてほしいだけではなく、
「自分を見てくれている」と感じることがとても重要です。
言葉だけでなく、目を合わせたり、軽い触れ合いを意識することで、その気持ちは伝わります。
たとえば、忙しくても「今、あなたのことを考えているよ」という気持ちを、
ちょっとした表情や身振りで伝えることができます。
そんな小さな心づかいが、孤独を和らげるのです。
5.「聞き役」になるという心構え
介護される方の話は、時に繰り返しや長話になることもあります。
でも、そこで「早く終わらせたい」と思うのではなく
焦らずに受け止めてあげることが大切です。
「それでどうなったの?」
「それは大変だったね」と優しく問いかけることで、
相手は「話を大切にされている」と感じ、心が軽くなります。

6.小さな「ありがとう」が大きな力に
介護される側は、「役に立てていない」と感じやすいものです。
そこで、家族からの小さな「ありがとう」や「助かってるよ」という言葉が、
どれほど励みになるか計り知れません。
言葉が照れくさいなら、手を握ったり、笑顔を向けるだけでも十分です。
大事なのは、相手の存在を認めることです。
7.一緒に過ごす時間の意味
一緒に何かをする時間は、介護される方にとっては大きな意味を持ちます。
趣味を共有したり、昔の思い出話を聞かせてもらったり、
ただ隣にいるだけでも「孤独感」が和らぎます。
大切なのは、質よりも「共にいる」という安心感です。
家族のその存在自体が、心の支えになるのです。
8.「できたこと」を一緒に喜ぶ
介護される方が少しでも自分でできたことがあったら、
大げさなくらい褒めて、喜び合ってみましょう。
「今日は自分でお茶を入れられたね」
「ゆっくりだけど歩けたね」
――そんな小さな達成感は、本人の自信につながり、
「生きていてもいいんだ」「自分にもまだできることがある」という希望になります。
誰かに認めてもらえることは、孤独感をやわらげ、自己肯定感を育てる大きな力になりますよ。
9.「昔話」を大事にする
高齢の方にとって、昔の思い出を語ることは心のリハビリとも言われています。
特に、自分が元気だった頃や、家族との思い出を誰かに聞いてもらうだけでも、
幸福感を感じることができます。
「それ、小さい頃に聞いたなぁ」
「おばあちゃん、それ何回目〜(笑)」と、やわらかい気持ちで受けとめてみましょう。
その会話が、心のつながりを育ててくれます。

10.「沈黙」も受け入れる
ときには、会話がなくてもいいんです。
横に座っているだけ、お茶を一緒に飲んでいるだけ、テレビを同じタイミングで笑って見るだけ。
その静かなひとときにも、
「あなたと一緒にいるよ」というメッセージはしっかり込められています。
介護の場に完璧さは求められません。
「頑張りすぎないこと」も、心のケアの大切なポイントです。
11.「ありがとう」は互いに分けあえる
介護する側、される側、お互いに「ありがとう」を伝えあえる関係が育つと、
心はじんわりと満たされていきます。
「今日も顔が見られて嬉しかった」
「一緒に笑えてよかった」
そんな思いを一言伝えるだけで、お互いの“孤独”が少しずつ減っていくこともあるのです。

12.おわりに – ゆっくり、歩幅をそろえて
介護は、する人もされる人も孤独の日々の連続です。
けれど、“人として誰かに大切にされている”という感覚があれば、
孤独感は少しずつやわらいでいきます。
時にくじけそうになることがあっても、
「一緒にいる」「あなたを思っている」その気持ちを、どうか伝え続けてください。
誰かの心をそっと包む言葉や態度には、大きな力があります。
あなたのやさしさが、今日もどこかで誰かの心をあたためているかもしれません。
あなたの介護の時間が、少しでもやさしいものでありますように。
いつも応援しています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考・出典
- 日本老年学会「高齢者の孤独緩和に関する情緒的支援の研究」
- 日本看護研究学会誌「高齢者の孤独感に関する文献レビュー」
- 厚生労働省「孤独・孤立対策の意義と社会的処方について」
- 内閣府「高齢社会白書(令和5年版)」
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